CONTENTS Vol.2
GRANDTREK MT2の開発秘話
“競技で磨いた信頼性。走破力にこだわったロングセラー。”
競技志向の設計思想を貫きながら、市販モデルとしても長年支持され続けてきたGRANDTREK
MT2。
過酷な路面をものともしない力強い走破力、信頼性と高い耐久性、そして“走るために生まれた”という存在感。なぜこのモデルがロングセラーとして選ばれ続けているのか開発者に、当時の思想と技術の裏側を聞いた。
Photographer:Fruolux / Hayato Tsuchiya
Writer:igrec,inc. / Sho Yamaguchi


GRANDTREK MT2は、なぜこれほど長く支持されているのでしょうか?
開発者: ひとことで言えば「実績」です。ラリーやクロスカントリーなど、過酷なフィールドで使われ続けてきたことが、プロアマ問わず多くのユーザーの信頼に繋がっています。シンプルに「走れる」「壊れない」。この2点が長く選ばれている理由ですね。
実は開発当初、全国のオフロード系プロショップを訪問し、実際に競技で勝てるタイヤの条件とは何か、意見を徹底的にヒアリングしました。その結果見えてきたのが、排泥性・外径・ナロー幅・耐カット性といった明確な要件でした。

競技を視野に入れた設計というのは、どういう意味ですか?
開発者: MT2はもともと本格的なクロカン競技を念頭に開発されており、設計思想が“とんがって”いるんです。無駄を削ぎ落とし、泥はけ・耐カット性・耐摩耗性・走破力を最優先にして作られたタイヤです。
排泥性を高めるため、トレッドのラグ溝を広く、かつ外側へラッパ状に広がる形状に設計。外径は、岩などへのヒットを避けるため、規格ギリギリまで拡大しました。

オフロード性能では、どんな部分に工夫があるのでしょうか?
開発者: まずトレッドブロックの高さとエッジの鋭さですね。ぬかるみや岩場でしっかり地面を掘り起こす形状を追求しました。ブロック同士の隙間も広めにとって、泥や小石を自力で排出する “セルフクリーニング性能” にも配慮しています。

一方で、高速走行時の安定性も求められると思いますが?
開発者:もちろんです。MT2は単なる競技用ではなく、市販モデルですから。ベルト構造やプロファイルを調整することで、直進安定性や操縦性も十分確保しています。高速道路でも“意外と静かで安定している”という声をよくいただきます。

耐摩耗性能やロングライフ性については?
開発者:MTタイヤはブロックが大きい分、倒れ込みによる偏摩耗が起きやすい。そのため、剛性バランスの調整やトレッドコンパウンドに工夫を施しています。実際にユーザーからも「意外と長持ちする」というフィードバックが多いですね。

サイドウォールの設計も特徴的ですね。
開発者: オフロードではタイヤ側面に岩をヒットさせることが多いんです。そこでパリダカラールラリー用のタイヤに採用していたプロテクターリブをバットレス部に配置して商品化しました。岩肌に柔軟に追従しやすいサイドウォールにすることができ、さらに機能性を高めています。

ワイドとナローでも設計が異なるんですね?
開発者: ワイドサイズは見た目と性能のバランスをとって、ホワイトレター側を裏組みするとカットプロテクトリブが最大幅位置に配置されており、お好みで使い分けられるようにしました。

競技に特化したナローサイズは表裏両面にリブプロテクター+カットプロテクトリブを配置した為、どちらの面を選んでもオフロードに最適化されています。

音や快適性にはどの程度配慮されていますか?
開発者:静粛性はATタイヤほど追求できませんが、パターン配置の工夫やブロック剛性の最適化によって、ある程度抑えています。MT2は「快適ではないけど不快じゃない」、そのギリギリのラインを狙った設計です。

どういった方に特におすすめしたいタイヤですか?
開発者:林道や岩場を本気で走る競技層の方や、本格的なMTタイヤのゴツゴツとした見た目やオフロードに特化した性能にロマンを感じる方に特におすすめです。R/T01やAT5では物足りない、玄人志向の方にこそ選んでいただきたいモデルです。

今後、MT2はどう進化していくのでしょうか?
開発者:MT2のような“競技で磨かれた製品”は、完成度が高い反面、更新が難しい商品でもあります。でも、テクノロジーや素材は日進月歩です。MT2開発当時も、「機能で一切妥協しない」を合言葉に、生産現場・営業・開発が一体となって、非常に複雑な構造のMT2を製品化しました。次世代モデルでは、その意志を引き継ぎながら、さらなる走破力と快適性の両立を目指して、次の一歩をすでに模索しています。ご期待ください!