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上質の創造、多少の頑さと、
柔らかさで伝統を育む。

黄八丈織人 山下芙美子

Vol.10
黄八丈織人
山下芙美子Fumiko Yamashita

「黄八丈めゆ工房」当主。
東京のお孫さんが、黄八丈に興味をもちだした。
「夏休みに半分くらい織ったから、また来るまでに少し進めておかないと」笑顔で織機を動かしていた。

 黄金色の絹織物は、軽く、リズミカルな音とともに生まれる。手と足の両方で操る織機の力強い音は、丈夫で美しい布が織られている証しだという。
 伊豆諸島の最南端、八丈島の伝統工芸である黄八丈。絹糸は島で平安時代の頃からつくられていたというほど、歴史は長い。黄八丈に使われる糸は黄色、樺色、黒の3色で、染料は島に自生する草木からつくられる。完成した反物は3色で織られているとは信じられないほど、柄も色合いも豊かなものばかりだ。八丈島の名も、この絹織物が由来だという。
「うちでは同じものを織らないんです。予約も受けないですし、業者の方から展示会で『同じ着物を注文したい』と言われてもお断りしています。だって、同じ着物を着ている人とばったり会ったら嫌でしょう」
 山下芙美子さんは、先々代のめゆさん、先代の八百子さんと続く黄八丈めゆ工房の3代目。夫の誉さん、3人の息子さんで切り盛りをしている。もっとも、工房ができる前から黄八丈は山下家100年の家業であり、家系は400年前までさかのぼれる。「化学染料が推奨された時代も、祖母は『うちのおじいさんから習った染めをやる』と、実直に昔からの方法を守り抜きました」

 誉さんは「八丈語といって、いまだに大和時代の言葉が使われている。島にはいろいろなものが昔のままで残っています」と言う。多少の頑さと、柔らかな発想。このふたつが同居してこそ、伝統は守られ、受け継がれていくのだろう。
「黄八丈には絣かすりの技術や、赤や青の染料がありません。でも、私はそれをすごく幸せなことだと思っているんです。技術も材料もなんでもそろっていたら、どこでつくっても同じ織物になるでしょう。ないものが多いほうが極められるし、面白いんですよ」
 ビューロが誇る上質な走りも同じ。ものづくりへの真摯な想いと、確かな技術力があるからこそ、唯一無二の走りを実現している。
 芙美子さんにとって、黄八丈は幼い頃からいつもそばにある、当り前のものだった。
「息子たちは、私と同じリズムで布を織るんです。子どもの頃からずっと耳にしていたから、同じなんですね。これを家業というんだなと、その音を聞いたときに思いました」
 小さな島に伝わる、歴史が詰まった色鮮やかな絹織物は、これからも輝き続ける。

  • 糸の色の組み合わせや織り方次第で、黄八丈はさまざまな表情を見せる。高機より原始的な地機で、動いているのはこの一台だけ。

  • 黒く染める途中の絹糸。椎の木の皮を剥いで乾燥させたものを煎じる。15回ほど染めを繰り返し、さらに泥に漬けて染め上げる。

  • 湯通し前の織物。お湯につけたのち、タワシで糸の糊を落とし、生地にツヤを出す。「タワシでこすっても平気な、丈夫な生地なんです」